気休め書 [現象]

書店やコンビニへ行くと、人生指南書や自己啓発書、宗教ガイド、スピリチュアル本など
人生に迷ったヒト向けの書物や雑誌特集が最近目につく。

「すーっとラクになる」
「苦難を乗り越えて」
「アセンションが」
「捨てなさい」
「つらいときに」
「悩む力」
「パワースポット」

こういった言葉が次々に目に飛び込んでくる。
混迷の時代、悩める時代に差し掛かっているということがわかる。
資本主義経済が行き着くところまで行き、代替的なイデオロギーを見出せないでいる現況。
さまざまな行き詰まりや反動やツケが、精神性への回帰という形で現れている。

私もこうした書物の多くを読んだ。
ストンと腑に落ちる文章も多かった。
言葉はヒトを傷つけるものである一方、ヒトを救うこともできるのかもしれない。

しかし、薬と同様、こうした本にも有効期限や副作用があるように感じられる。
読んだあとしばらくは前向きになり、新たな人生の一歩を踏み出したような気分になる。
そのハレな気持ちはそう長くは続いてくれない。
生きていれば不条理に遭遇し、人間関係の煩わしさに揉まれてしまう。
そうしてケの生活へと戻り、前向きな気分も霧消していく。
不安が募り、それまでのポジティブさが幻影だったと悟る。

もちろん、そうならずに前向きに生き続ける人も少なくなかろう。
ただそういう人は、もともとの性格がポジティブであった可能性が高い。
人間の性格はなかなか変わるものではない。
書物数冊で生き方が変わるなんて生易しいものではない。
運動神経や癖などと同様、長年の訓練や習慣によって身についていくのが性格だ。

だから、数ある人生指南書のなかでも、日常の訓練や習慣を薦めているものには
優れた書物があるのかもしれない。

書物に特効薬的なものを期待しないほうがいい。











タグ:人生指南
nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。