文學ザッパ 其の五 [文章]

任意の5作家の本から、1センテンスだけを抜粋する。
今回は冒頭の一文を拾ってみた。


■くすぐったい、と思って房子が目をさましてみると、ベッドのまわりを蛾がとんでいた。□
   江國香織 『蛾』


■不幸な男がうまれた。□
   司馬遼太郎 『人斬り以蔵』


■東京都江東区高橋二丁目の警視庁深川警察署高橋第二交番に、同町二ノ三所在の簡易旅館「片倉ハウス」の長女がやってきたのは、平成八年(一九九六年)九月三十日午後五時頃のことであった。□
   宮部みゆき 『理由』


■麻布六本木の辰床の芳三郎は風邪のため珍しく床へ就いた。□
   志賀直哉 『剃刀』


■私が羅臼を訪れたのは、散り残ったはまなしの紅い花弁と、つやつやと輝く紅いその実の一緒にながめられる、九月なかばのことでした。□
   武田泰淳 『ひかりごけ』



物語はこうして始まる。




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