文學ザッパ 其の四 [文章]

任意の5作家の本から、1センテンスだけを抜粋。
つまらなくても続ける。

この作業をやってみて感じたのは、
文章というのは、センテンスが平面的・一方向的に並べられたものではなく、
立体的・多方向的に組み合わさった複雑な集合体だということ。

それだけに、1センテンスだけ取り出しても意味をなさないし、全体像が見えない。
が、ある程度の長さのセンテンスには著者のクセが表れる。


■ゆうべは妻の尚美相手に延々と水泳の効用を説き、風呂にまでついていったところで厭がられた。□
   奥田英朗『イン・ザ・プール』


■唇と歯のあいだで、砂と唾とを分離し、歯にこびりついて残った分だけを、指先でこそげおとした。□
   安部公房『砂の女』


■第五位の、家出なんかはよくやったものだと我ながら思う。□
   角田光代『人生ベストテン』


■「蛇の道はヘビっていいます」と牛河は両手の手のひらを広げ、楽しい秘密を打ち明けるように言った。□
   村上春樹『1Q84 BOOK3』


■妻は仕事で得られるある種の達成感を知っていただけに、退職後もただ家庭におさまるより、社会とかかわりをもつことを望んで、積極的にボランティア活動に勤しんでいたのです。□
   倉嶋厚『やまない雨はない』



※またしても、盲牌で村上春樹をつかんでしまった…
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